福祉立国デンマークはどんな国?4

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デンマーク福祉社会とバンク‐ミケルセンの思想と実践 第5 回

デンマークの医療・福祉

デンマーク連載24回シリーズ
医療費は基本的にすべて無料です。ただし、歯科医療は18歳未満は無料ですが、18歳以上の歯科、理学療法、脊椎指圧療法、薬局は一部自己負担があります。また、デンマーク人は旅行者も無料で治療を受けられます。

旅行者も医療費がかかりません写真 User:EPO

旅行者も医療費がかかりません

病院はほとんどが県立です。一部私立もありますがごくわずかです。国民一人にホームドクター、ケースワーカー(ソーシャルワーカー)がついており、病気はまずホームドクターが治療します。そこで治療ができない場合に、はじめて病院に紹介されるのです。ホームドクターで治療が終わる場合が約80%となっています。

福祉サービスが必要な場合は、ケースワーカーが相談にのりアドバイスをしてくれます。ノーマリゼーションの考えのもと、できるだけ在宅での生活ができるように政策がすすめられており、またそれが可能なように手厚い福祉サービスも準備されています。

高齢者の生活支援

1960年代の間取り

1960年代の間取り(クリックして拡大)

1980年代以降の間取り(クリックして拡大)

1980年代以降の間取り(クリックして拡大)

デンマーク社会省推奨デザイン(クリックして拡大)

デンマーク社会省推奨デザイン(クリックして拡大)

高齢者の施設は、30年前設立の高齢者介護施設(プライイェム)ですらすべて個室であり、シャワーとトイレがついています、現在ではこれも古いタイプとみなされています。

今は入所施設ではなく高齢者住宅が作られており、その基準は一人あたり2DKです。現在の考え方は施設入所ではなく、そこが住居であり、税金を払い住んでいる「住人」という考え方です。「住人」なので、家には住所番地やポストがある所もあります。

また、施設へ収容されている訳でもなく、病院入院中でもなく、そこの「住人」なので当たり前なのですが、食事時間、食べるものも自己決定により自由に決めることができます。カフェテリアがあるところは、そこで食べてもいいし、部屋へ運んでもらってもよいのです。メニューも選ぶことができ、ワイン、ビールなどもあり、当然注文できます。カフェテリアは、だれでも利用できるので、地域の人はお金を払って食べに来たりもしています。

高齢者の生活支援に関しては

  1. 人生の継続性
  2. 自己決定の尊重
  3. 自己資源の開発

の3原則が打ち立てられており、あらゆるサービスが充実しています。

デンマークでは無資格者が高齢者の介護をすることはありません。社会保健介護助手や社会保健介護士が担い手です。社会保健介護助手は以前はホームヘルパーと呼ばれていて、7週間の講習で資格をとることができましたが、1990年以降は1年2ヶ月の教育期間が必要となりました。社会保健介護士は、それに加えて1年8ヶ月の教育が必要です。

介護職の労働環境として、介護者の身体を痛めないように、持ち上げる動作は禁止され、押すか引くかの動作で介護をします。持ち上げるときはリフトを使用し、ベッドから車椅子への移乗もリフトを利用して介護者の腰を守ります。また、事務用机なども、その人に高さがあわせられる様なつくりが義務づけられています。

右の図はかつてのプライイェムと最近の高齢者住宅の間取りを紹介しています。これを見てもゆとりある生活の実現に向けて、住環境がさらに向上していることがわかります。

障碍者の生活支援

障碍者の経済基盤は、「早期年金」であり、就労者の平均的な収入が分相当な「給与」として支給されるので、就労が困難な障碍者も安定した生活を営むことができます。また、電動車椅子等の生活に必要な用具は、特別な手続きの必要もなく、図書館から本を借り出すような気軽さで、市の「補助器具センター」からいつでも借りることができます。さらに、自分に適したヘルパーを公費で「雇う」ことができます。

このヘルパーは高齢者のホームヘルパーとは異なり、時間単位ではなく日替わりで交替し、1日の勤務時間は24時間です。障碍者の「生活秘書」として、日常生活だけでなく、職場での仕事もサポートし、旅行にも同行します。障碍者は車椅子のまま乗ることができるバン型の自動車を所有し、ヘルパーの運転で、どこでも好きなところへ行くことができるのです。

このようにして、自力ではほとんど身体が動かせない重度の障碍があっても、在宅での生活が可能で、仕事や余暇などの機会は障碍のない人と同じです。

以上が、福祉先進国と言われている、デンマークという国家の概況です。社会福祉国家と呼ばれているデンマークにおいては、特定な人々のみの生活を保障するのではなく国民全員の生活を「揺りかごから墓場まで」保障しているのです。そして、それを支えているのが、徹底的な民主主義教育と、高福祉高負担の税制なのです。

次回からはノーマライゼーションの理念についてお伝えしていきます。


在宅福祉サービスを受けても自宅での生活が困難な高齢者が入居する居住施設のこと。
野村武夫,2004,『ノーマライゼーションが生まれた国・デンマーク』ミネルヴァ書房,pp.136-138

佐藤豊:NPO法人や社会福祉法人で知的障碍者授産施設の経営、ヘルパーの養成に長年携わるなど福祉事業をライフワークとして取り組んでいる。早稲田大学政治経済学術院公共経営研究科修士課程修了。国会議員政策秘書資格認定。岩手県一関市出身。

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