バンク-ミケルセンの理念を受けて
デンマーク福祉社会とバンク-ミケルセンの思想と実践 第11回

中園[1]はニイリエが唱えるノーマライゼーションの原理を次のように説明しています。
ニルジェは次のように定義している。「すべての精神遅滞者の日常生活の様式や条件を、社会の普通の環境や生活方法にできるかぎり近づけることを意味する。」
彼は、障害者の『障害』とは『社会がつくりだした環境や生活状況がつくる障害や他者の理解のない態度からくる障害』を考えねばならないという。
そして、ノーマリゼーションの原理とはこうした状況を克服して、市民と共通した社会的環境[2]をつくっていくことだという。
そしてニイリエはその目的・方法として、以下のような八つの原理[3]を発表しました。
- 一日のノーマルなリズム
- 一週間のノーマルなリズム
- 一年間のノーマルなリズム
- ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験
- ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
- その文化におけるノーマルな経済水準とそれを得る権利
- その社会におけるノーマルな経済水準とそれを得る権利
- その地域におけるノーマルな環境形態と水準
中園[4]はまた、ヴォルフェンスベルガーの原理に関して、以下のように説明しています。
彼は1972年の著書でノーマリゼーションの原理を次のように定義している「できる限り文化的に通常の人間の行動と特徴を確立あるいは保持するために、できるかぎり文化的に通常となっている諸手段を利用すること」、「障害者を逸脱した人とみる我々の側の態度と逸脱しているとみなすにいたる行動や特徴にも注意をむけることが大切である」とヴォルフェンスベルガーが指摘している
また、ノーマライゼーションが障碍者をノーマルにすることと誤解されやすいことから、SRV[5](ソーシャル・ロール・バロライゼーション)を提唱しました。そして、社会から否定的に評価されやすい障碍者などに対して、新しい価値尺度を確立し、その評価を高める必要があると主張したのです。
このように、バンク‐ミケルセンが提唱した、ノーマライゼーションの理念は、他者により考察が加えられていきました。
しかし、バンク‐ミケルセンは、「ノーマリゼーションとは難解な哲学ではなく、いたずらにむずかしく考える必要もない。ごくあたりまえのこと、ごくあたりまえの考え方でもし自分がその立場に立ったらどうあってほしいかを考えれば、そこから自然に導き出される答えです」と述べたのです。
ノーマライゼーションという言葉が世界で使われる現在、もう一度、ノーマライゼーションの原点であるバンク‐ミケルセンの思想に立ち戻り、自分自身の問題としてその意味するところを理解しなおすことが重要です。
[1]中園康夫,「ノーマリゼーションの課題とその実現方法-特に主要な定義との関連において-」社会福祉研究 第31号,pp.25
[2] 人間にふさわしい条件、発達にふさわしい条件がみたされる環境=これらは地域社会の人たちが日常の生活において保障されている条件です
[3] ベンクト・ニイリエ,前掲書, pp.130
[4]中園康夫,前掲「ノーマリゼーションの課題とその実現方法-特に主要な定義との関連において-」pp.25
[5] Social Role Valorization
佐藤豊:NPO法人や社会福祉法人で知的障碍者授産施設の経営、ヘルパーの養成に長年携わるなど福祉事業をライフワークとして取り組んでいる。早稲田大学公共経営学術院修士課程修了。岩手県一関市出身。
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