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バンク‐ミケルセンと親の会の出会い

デンマーク福祉社会とバンク‐ミケルセンの思想と実践 第17回

デンマーク連載24回シリーズ デンマークの社会省において、バンク‐ミケルセンは、知的障碍者課に配属されることになり、はじめての仕事が知的障碍者入居施設の調査でした。そこで彼を愕然とさせたことはデンマークの政策でした。それは保護主義により、知的障碍者を危険なもの、異物と考えた政府が、大型施設に収容している姿でした。その大型施設は、バンク‐ミケルセンがゲシュタポに捕らえられ収容されていたナチスの収容所に酷似しているものであったといいます。

 そして、バンク‐ミケルセンは劣悪なナチスの収容所のような環境にある当時のデンマークの大型施設に、同じ人間である

大きな道のりも一歩から写真 Kåre Thor Olsen

バンク-ミケルセンの大きな道のりも親の会との出会いから一歩を踏み出していきました

知的障碍者を収容することに、大きな疑問を持つようになります。

 このような経緯で、バンク‐ミケルセンは、知的障碍者の処遇を抜本的に変更する必要性を感じることとなりました。

 デンマークでは、知的障碍者の処遇活動は1955年にはじめられたとされます。それ以後いろいろと変遷がありますが、戦後になっての処遇もまだ隔離的で保護主義の強いものでした。

 中には、1500床以上にもなる巨大施設があったといい、知的障碍児者を一部屋に何人も詰め込むような処遇をしていました。そういった物理的生活条件の劣悪さばかりではなく、前章で述べた優生学に基づく保護主義のもとに優生手術を無差別に実施するような状況にありました。こういった国の対応について、知的障碍者の親たちが疑問や問題を感じ、互いに協力し、何とか改善していこうという願いが大きくなっていったのです。

 当時の社会省の担当者がバンク‐ミケルセンでした。バンク‐ミケルセンはデンマーク親の会のメンバーと相談しながら、知的障碍者処遇の改善のための運動と、具体的な制度づくりを開始しました。親の会とバンク‐ミケルセンが話し合う場となったのが、以前述べたフォルケホイスコーレだったのです。

 このような経緯によって、1951年から1952年にかけてデンマーク知的障碍者親の会が発足しました。そのスローガンとは以下のような内容です。[1]

  1. 入所者20から30人の小規模な施設を建設する
  2. 知的障碍児に対するよりよい監督と財政的扶助する
  3. 小規模施設を親や親戚が生活する地域に建設する
  4. 他の子どもと同じように教育を受ける機会(教育の権利)をもうける
  5. 法制上の保護をする
  6. 自発的な活動の原則を与える
  7. 作業所を含んだ昼間施設の建設をする
  8. 施設のための連絡委員会をつくる

 そして、バンク‐ミケルセンと親の会との議論が進むうちに、社会の体制を根本から変えていく必要があるという結論になり、政府に対して新しい政策をとることを具体的に求めていくようになりました。

 当時このような活動を応援する専門職は社会省の中にはほとんどいませんでした。多くの職員たちは、親の会の目標や活動に対して疑問を提示し、単なる圧力団体の一つにすぎないと考えました。しかし、社会省の担当者であったバンク‐ミケルセンだけは、親の会の申し出を受け止め、その願いに共感したのです。そして、個人としての立場で親の会とともに知的障碍児の人権や生活のために活動しました。

 新しい政策と法律をつくるべく、親の会が掲げたスローガンを社会省への要請として文章化することになりました。その文章の見出しに親たちの願いを象徴的に表現する言葉として「ノーマライゼーション」という言葉を用いることにしたのです。

 このときのことをバンク‐ミケルセン(1995)[2]は次のように述べています。

用語と内容について他の北欧の国々の専門家ともいろいろ討議しました。ヒューマニゼーション(humanization)あるいはヒューマン・リレーション(human relation)もありました。また、イークォーライゼーション(equalization)など、いろいろな用語が考えられました。しかし親の会の願いを一番よく表すものとして、結局ノーマライゼーションという語に落ち着いたのです。


[1]N.E. バンク-ミケルセン,中園康夫訳,1978年,「精神遅滞者のための居住施設サービスの形態の変化」,四国学院論集.No.43,pp.169

[2]花村春樹 訳・著、1995年,前掲書,pp.80

佐藤豊:NPO法人や社会福祉法人で知的障碍者授産施設の経営、ヘルパーの養成に長年携わるなど福祉事業をライフワークとして取り組んでいる。早稲田大学公共経営学術院修士課程修了。岩手県一関市出身。



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