投票のバリアフリー
「視覚障害・聴覚障害の方のための選挙公報」に引き続き選挙に関わる話をお届けします。
今回は選挙で欠かすことのできない投票の話です。近年、障害のある方が投票する際のサポートが整備されつつありますが、まだいくつかの問題が残ってます。2009年現在でできる事、できない事を見ていきましょう。
候補者名の記載は自著が基本、代筆も可
日本の法律では候補者目の記載は「自書」が基本ですが、そうする事が難しい障害を抱えた方も多くいます。
視覚障害で字が書けない人の場合は、点字機を使った点字投票をします(どの投票所にも点字器が設置してあります)。また、点字が使えない方や字が書けない方は、投票所の管理者が指名した代理人に代筆してもらうことができます。
つまり、投票所に行ければ、投票するための様々なサポート体制を利用する事ができます。
投票所に行けない場合は郵送での投票も可
重い身体障害のため投票所に行くことが困難な方の場合でも、病院や施設に入っている場合、選挙管理委員会が認めれば、その施設内で不在者投票をすることができます。投票箱が施設内に用意され、自書はもちろん、点字投票や代理投票を可能です。具体的に郵送での投票が認められる基準は次の通りです。
郵便等による不在者投票の対象者
郵便等による不在者投票は、身体障害者手帳を持っている選挙人で、次のような障害のある者(○印の 該当者)に認められています。
身体障害者手帳 障害名 障害の程度 1級 2級 3級両下肢、体幹、移動機能の障害 ○ ○ 心臓、じん臓、呼吸器、ぼうこう、直腸、小腸の障害 ○ - ○ 免疫の障害 ○ ○ ○ 郵便等による不在者投票における代理記載制度の対象者
郵便等による不在者投票をすることができる選挙人で、かつ、自ら投票の記載をすることができない者として定められた 次のような障害のある者(○印の該当者)は、あらかじめ市区町村の選挙管理委員会に届け出た者(選挙権を有する者 に限る)に投票に関する記載をさせることができます。
身体障害者手帳 障害名 障害の程度 1級上肢、視覚の障害 ○総務省HPより
このように、投票所に行けない重い障害の方には郵送での投票が認められており、さらに、病院に入院している方には代理記載も認められています。つまり、選挙委員会の認めた病院等の施設は一般の投票所と同じように投票する事ができます。
自宅療養で自書できない人は投票できない現状
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病院・施設 | 自宅 |
○自書 | ○自書 |
○点字 | ×点字 |
○代理 | ×代理 |
前項で見たように、自宅で療養している人の場合は、郵便投票を申請することができます。ただし「郵便投票は自書に限る」となっており、点字や代筆を頼むことはできません。これは、過去に老人ホームなどで不正な代理投票が行われた問題から、総務省が自書に重きを置いているためです。
海外の事例を見てみると、例えばデンマークでは不正を防止する為、違う政党のボランティアが2人立会い、投票する人の不正と、立会人同士の不正をお互いチェックするという方法をとっています。
このような方法が取り入れられれば、障害者だけではなく、老人ホームのお年寄りももっと投票しやすくなるでしょう。立候補する候補者同士の公平性にはとても配慮している日本の制度ですが、投票する側の公平性への配慮は改善する余地がありそうです。
大きな声で主張できない人々のためにも、こういった方法がどんどん取り入れられていくと良いですね。
最後に一言選挙雑学クイズの解答です。問題は「選挙カーに華を添えるウグイス嬢ですが、男性が乗っている場合はなんというのでしょう」。
答えは「カラス」でした。