なぜ働くのか?

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15歳から94歳まで働き続けた女性理容師

「うるさいバァさんの説教がたまに聞きたくなるんだよねぇ」

 奇才・ビートたけしさんにそう言わしめた女性こそ、94歳で亡くなる直前まで美容師として働き続けた加藤寿賀さんである。

 加藤さんのことは、私も書籍『なぜはたらくのか―94歳・女性理容師の遺言』(主婦の友社)ではじめて知った。15歳から94歳までの約80年、ひたすら働き続けた女性。「やることがいっぱいある」が加藤さんの口癖だったという。

何かに行き詰まったら空を見上げてみては?

 加藤さんが利用し試験に合格したのは、1935年19歳のとき。合格者の中で女性は加藤さんひとり。女性ということで理容師試験の講習会には行かせてもらない。講習会のノートさえも見せてもらえず、夜中にこっそりノートを書き写して勉強した。

 23歳で結婚をし、長女・次女を授かったものの、29歳のときに夫を交通事故で失う。このとき、生涯独身を誓い、理容師として生き抜く決心をしたという。

 実家に身を寄せ、郵便局の理髪室で局員の髪を刈りながら、飛び込みで近所を回り営業をし、それでも食べて行けず、闇商売で子どもを寝かしつけてから深夜の東京を歩き回った。

 やがて37歳で新橋駅のガード下に「バーバーホマレ」を開店。わずか3坪半からスタートし、10年後の1964年には、6坪のお店で女性職人を2人雇うまでになっていた。

働くことは周りの人たちを楽させること

 そんな加藤さんにとって働くとは、“端を楽させる”ため。つまり、周りの人たちを楽させる、楽しませるために働くという。決して、自分のためとか楽しんで仕事をするとかではなく、あくまでも人のために働くというのだ。ただ好きなだけでは80年も働いてこれなかったとも語っている。

 最初は「家族のため」に働いた加藤さん。そして、娘さん2人が嫁いでからは「お客さまのため」に働くようになった。そのことについて、加藤さんは著書の中でこう語っている。

 『若い人の中には、人間は「人さまのためにはたらくんだよ」ってこと、「世の中のためにはたらかなきゃいけない」ってことを知らない人が多すぎる。だから何の仕事に就こうか、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、この会社では自分を生かせないとか言って、せっかく就いた仕事も辞めたりする。
でも、「周りの人のためにはたらくんだ」って分かれば、そう簡単には辞められないでしょう。仕事を辞めたいと思っている人は自分しか見えなくなっているけど、顔を上げて周りのことを考えてみなさいと、言いたいですね。』

与えられた仕事を天職だと思ってこそ人間の価値が決まる

 私もライターとして好きなことが仕事になっているが、ここに辿り着くまでにはさまざまな仕事に就いた。今となれば、すべての仕事が文章を書く際に活かされているとは言え、確かに加藤さんのおっしゃることには一利も二利もある。加藤さんは天職についてこうも語っている。

 『この年齢まで続けてきたから思うんです。憧れて夢見た仕事に就けて、その上、全うできる人なんて、ほんのひと握り。何となくその仕事に就いたって人が殆どではないでしょうか。
その与えられた仕事を、「自分の運命だ、天職だ」って思えるかどうかでその人間の価値が決まると思うんです。誰もが社長や歌手になれるわけじゃない。夢や憧れと違う道に入ったときに、その仕事をどう思えるかで、人生幸せかどうかが決まってくる。いつまでも「こんな仕事したくない」って思っていたら、人間がどんどん小さくなってしまいますよ。』

 もしも、現在、あなたが好きな仕事に就けていないとしたら、加藤さんがおっしゃるように、その仕事を天職と思い誠心誠意働いてみてはどうだろう?きっとそこから見えてくるものはたくさんあり、そこから学ぶことは山ほどあるだろう気がしてならない。

【引用文献】
『なぜ、はたらくのか/94歳・女性理容師の遺言』(加藤寿賀著・主婦の友社)

川端真弓。フリーライター/薬膳アドバイザー。埼玉県所沢市在住。1986年に「無理なく無駄なく簡単エコロジー」を合言葉に、子育て中の主婦でも身近にできる環境問題を考えるサークルを発足。以来、無農薬栽培など風土に根差した生き方を模索中。現在は、写真と詞をコラボした新しい感覚のアート「PHOTOEMほちょう調」を広める活動にも携わっている。WEBサイトはこちら

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