ノーマライゼーションの3要素 前編

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デンマーク福祉社会とバンク‐ミケルセンの思想と実践 第8回

デンマーク連載24回シリーズ ノーマライゼーションの理念を社会において適用させるために重要な要素が3つあるとして、バンク‐ミケルセンは次の様に述べています。

「生活条件(condition of life)は、住居の条件(housing condition)、仕事の条件(working condition)、余暇の(leisure)の三側面から検討しなければならない。」[1]

1つ目は住居の条件

集合住宅

共同生活は良いところもいっぱいあるんですけどね

家族と同じ住居で生活することがノーマライゼーションの条件の一つになりますが、事情によって家庭で生活できない障害者もいます。その様な場合でも、施設は15人から20人の小規模にとどめ、個人の家庭の生活と同様の生活リズムをつくる必要があります。大型施設での集団生活は個人のノーマルな生活の実現を阻害するものです。

現在において、日本の障害者の住居とバンク‐ミケルセンが生誕したデンマークの障害者の住居を比べると、格段の差があります。

日本の障害者の大型入居施設の住居を考えてみましょう。具体的に言うと宮城県の舟形コロニーなどがそうですが、6畳の部屋に3人がはいっている状況です。トイレも一緒、風呂も20人ほどがいっせいに入り入る時間も決められている。食事も、多くの入所者たちが同じものを食べている。

宮城県では浅野知事(当時)の高らかな提唱の下に大型施設解体が宣言され、全国的にも多くの賛同者を得ることができました。しかし一時はこの方向が進むように見えましたが、その後もコロニーと言われる大型施設は青森以外の東北五県について言うとまだ形を多少変えながらも存在しているのが現実です。正確に言うと青森は最初からコロニーが設立されていないので、東北については全てのコロニーがまだ残っていると言っても過言ではありません。ただ、各コロニーによってはなるべく入居者を近くのグループホームに移動させるなどして個人の生活を重視していこうとする動きも見られるようにもなっております。

ところが、デンマークにおいてはそれぞれが障害をもっていても、自分の個性にあわせて生活をすることができます。トイレも風呂も別々、食べるものも個々好きなものを選択して食べることができるのです。

デンマークにおいては生活者支援法という法律があり、コロニーや施設においても個人の生活スペースが49㎡以上と定められ、5人の入所者がいるグループホームに対して、昼のヘルパーは6名、夜のヘルパーは4名と、細かく決められています。

2つ目は仕事の条件

どんなに重い障害をもっていても、生活する能力が弱くても、人はだれでも生きていく過程において社会の一員として仕事を持ち、他の人々の役に立つということが非常に大切です。この仕事という要素が人間として生きていく上で大きな位置を占めています。また、障害児においては、教育を受ける権利が保障されていなければなりません。

現在、デンマークにおいては、仕事がどうしてもできない場合には、デイケアセンターなどで自分たちの趣味を生かしながら、ライフスタイルとして染物をしたり、紙すきをしたり、楽器づくりをするといったことが仕事の一端を担っています。

日本の場合は施設においての仕事は、銅線をむく、車の水抜き剤のラベルをはがし新しいラベルを張り替える、地元の地場産品のかまぼこの型しきの中にたまってしまったセルロイド質の粉をふきとる、といった単純な仕事等しかないのが現状です。また、外部に一般就労という形ででるとしても、一般就労先での人間関係がうまくいかなくて、数ヶ月で再び施設にもどるという例がかなり多く見受けられます。日本で仕事における成功事例というのは、知的障害者の場合極めて難しいのが現状です。

また、身体障害者に関しては、知的能力は高いが、身体能力が弱い場合が多いです。権利に対する強い意識があり、職場において回りとの共生がうまくいかない場合があります。こういった中で障害者が日本の社会のなかで仕事をどのように取得し、またそれを社会の中にどう生かしていくかが、非常に大きな問題になっています。


[1]N.E.バンク-ミケルセン,中園康夫訳,1978年,「ノーマリゼーション(normalization)の原理」四国学院論集,No.42

佐藤豊:NPO法人や社会福祉法人で知的障害者授産施設の経営、ヘルパーの養成に長年携わるなど福祉事業をライフワークとして取り組んでいる。早稲田大学公共経営学術院修士課程修了。岩手県一関市出身。

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