デンマークの暮らしと「ヒュッゲ」(3)

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 立春は冬至と春分のちょうど真ん中に位置し、暦の上では春の始まりと言われます。デンマークでも、遠い春の訪れを感じ始めるのは、ちょうど立春の頃になります。ただ、平均気温が最も低いのも立春の頃の2月初旬で、実際には、春とは名ばかりの寒い日が続きます。ただ、冬至の頃の日照時間と比べると、一日がずいぶん明るくなり、通勤・通学時間に「蒼い刻」を楽しめた1月とも異なり、2月は明るく澄みきった朝が特徴です。2月の空気は1月ほど湿っぽくなく、冷たいけれどすっきりしているように感じます。1月の蒼い刻も幻想的で素敵ですが、本格的な春までには2ヶ月近くもあるにもかかわらず、2月の明るく澄みきった空気は、どこかに春の足音を感じます。

 この時期の大きな喜びは、黄花節分草(キバナセツブンソウ)を見つけることです。黄花節分草は、デンマークの春の訪れを真っ先に告げてくれる、親指の爪よりも小さな球根花です。硬く冷たい地面から顔を覗かせたばかりの頃は、珠のような蕾ですが、陽があたると愛らしい花が開きます。群生していることが多い球根花なので、毎年咲く場所が決まっていて、ここではそろそろ顔を覗かせているかな、とか、あそこでは花が咲いているかなと、過去の記憶を手繰り寄せて、散歩がてら今年の開花状況をあちこちと確認していくのは、春の息吹を感じる大切なひとときです。可愛らしい花を見つける度に、思わず微笑みがこぼれます。2月の一人ヒュッゲの王道かもしれません。

 明るく澄んだ週末の朝、少しゆっくりと起きて、冷たい風をきって散歩をしながらお気に入りのカフェで朝食をとるひとときは、2月らしいヒュッゲだと思います。カフェでの朝食は、パリやニューヨークなどでも見かける都会の朝の楽しみ方だと思いますが、小さな子どもを持つ家族が、朝ごはんに舌鼓を打ちながらゆっくりしたひとときを過ごしていたり、三世代や知人が一同に介して朝のひとときを楽しく過ごしていたり、いろいろなパターンを見かけることがデンマークらしいように感じます。食事の支度にかける時間の代わりに、お気に入りのカフェで家族との繋がりを確認するひとときを過ごす・・・そんなヒュッゲの情景を目にすると、こちらもヒュッゲのお裾分けを預かった気分になります。ちょっとした良質なひとときを作ることは、心の活力を漲らせる源になるように思えます。

執筆:くらもとさちこ
広島県出身。広島女子大学卒業。コペンハーゲン在住。デンマークの「ヒュッゲ」と食文化に興味を抱いて30年近く、デンマークでの暮らしを実践。デンマークの高等教育機関で健康と栄養を専攻後、地元で丁寧に育てられた旬の野菜を主役にした身体に優しい料理を提唱している。菜食を伝統とするシュタイナー教育機関での献立指導とレシピ開発にも力を注ぐ。デンマークの文化を日本に紹介するつなぎ役として活躍する側面を持ち合わせる。今年4月に誠文堂新光社から出版される「北欧料理大全」で翻訳と編集を担当。

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