デンマークの暮らしと「ヒュッゲ」(4)

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 デンマークでは、2月半ばに一週間ほどの冬休みをとることが一般的で、学校や幼稚園にも冬休みがあります。(註: 日本の冬休みは「クリスマス休み」と呼ばれています。)冬休みはスキー休みとも呼ばれていて、アルプスやスカンジナビア山脈のスキー場に出かけることを楽しみにしている人も少なくありませんが、家でゆっくりすることに安らぎを覚える人もいます。寒い季節なので、スキーや散歩を楽しむ他は、屋内の楽しみがメインです。特別展が冬休みと重なるように予定する博物館や美術館も多く、バレエやオペラ、芝居、音楽会、映画など、心が潤うひとときを楽しめる企画も盛り沢山です。芸術鑑賞そのものもヒュッゲのひとときですが、観劇の前に劇場の近くにある心地よいレストランで食事を楽しむひととき、美術館をひと回りした後、コーヒーとお茶菓子で一息つくひとときは、複数でも一人でも心が潤うヒュッゲの時間です。

 冷え込みの厳しい寒い日、散歩の途中に、カフェラテやホットチョコレートなどの温かい飲みものを楽しむこともヒュッゲの一つです。一般的には、週末や休暇に向けて予め焼き菓子を焼いておき、家族や友人と散歩を楽しんだ後、温かい部屋で用意しておいた焼き菓子をお茶やコーヒーと一緒に楽しむひとときがヒュッゲの定番です。寒い季節でも時間を見つけて散歩に出かける習慣は、驚くほど定着しています。散歩の時に感じる冷たい空気は新鮮で気持ちがよく、健康にもよいという認識は高いのですが、この季節、自然はやはり惚れ惚れするほど美しいのです。葉が落ちている枝が重なって複雑なシルエットを描いている木々には独特の風情がありますし、その枝にシジュウカラやコマドリが止まっている姿を見つけると嬉しくなります。散歩で見つける自然の美しさを堪能し、散歩の途中や散歩の後でお茶や焼き菓子を囲む空間を楽しむのは2月のヒュッゲの典型だと思います。ヒュッゲのひとときで心と時間の余裕を意識的に作っていく、その積み重ねが良質な暮らしに繋がるのでしょうね。

 二月も下旬になると、待雪草(マツユキソウ)とも呼ばれる可憐な花、スノードロップが咲き始めます。昔、雪には色がなかったため、雪がいろいろな花に色を分けてくださいと尋ねたところ、色を分けることを快諾したのがスノードロップだったという逸話があります。だから、雪はスノードロップのように白く、スノードロップの花の先端はギザギザなのだと言われています。そして、雪はスノードロップの優しさを喜んで、雪の中でも咲くことができる花にしたとも言われています。素敵なお話ですね。このお話を心に思い浮かべながら、スノードロップの咲く道を散歩する時間もヒュッゲのひとときです。

執筆:くらもとさちこ
広島県出身。広島女子大学卒業。コペンハーゲン在住。デンマークの「ヒュッゲ」と食文化に興味を抱いて30年近く、デンマークでの暮らしを実践。デンマークの高等教育機関で健康と栄養を専攻後、地元で丁寧に育てられた旬の野菜を主役にした身体に優しい料理を提唱している。菜食を伝統とするシュタイナー教育機関での献立指導とレシピ開発にも力を注ぐ。デンマークの文化を日本に紹介するつなぎ役として活躍する側面を持ち合わせる。今年4月に誠文堂新光社から出版される「北欧料理大全」で翻訳と編集を担当。

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