デンマークの暮らしと「ヒュッゲ」(6)

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いろいろなところで春の兆しを感じますが、春との距離を急に身近に感じるのは、ミラベルの花があちこちで咲き始める3月中旬あたりではないかと思います。ミラベルは梅の一種なので、花が咲いているところには、よい香りが漂います。晴れて青空に恵まれる日には、その香りが一層強くなり、その香りに包まれた散歩は3月の素敵なヒュッゲの形です。春の到来を目で感じて、耳で感じた後、いよいよ香りや味で春が楽しめるのはとても幸せなことだと思います。

ミラベルの花

盛夏の頃に熟れるミラベルの実は、加熱すると洗練された味になり、ルバーブと同じようにコンポートを作りスイーツに展開します。とてもおいしい実ですが、デンマークでは一般のお店で容易に買えるくだものではありません。デンマークの人は、どこでミラベルの花がたくさん咲いているか、花の咲く時期にしっかり確認しておく人が多いようです。夫も確認を怠らない一人で、盛夏を迎え、そろそろミラベルの実がなっているかなという話になると、今年はあそこの木にたくさん花が咲いていたから、今頃はたくさん実がなっていると思うよ、という答えが返ってくるのです。そして、その観察はとても正確で、毎年いろいろなところから、かなりの量のミラベルを収穫してきてくれます。ミラベルの花の咲き加減の確認は、季節の移り変わりを楽しむデンマーク流ヒュッゲの一つのようです。残念ながら、私は30年近くこの国に住んでいながらこの境地には至っておらず、もっぱら、春のミラベルの花の香りと盛夏のミラベルのおいしさを楽しむことにしています。

満開の花をつけたミラベルの木

春はいろいろなところにさまざまなかたちにやってきていますが、まだまだ雲に覆われたどんよりした日が続くのも3月です。気温が低く湿った日には、やはりホットチョコレートでほっこりしながら、親しい人とヒュッゲのひとときを楽しみたい気持ちになります。大好きなカフェで、温かい飲みものを片手に読みたかった本のページをめくりながら過ごすヒュッゲも素敵ですね。

コペンハーゲン市街

執筆:くらもとさちこ
広島県出身。広島女子大学卒業。コペンハーゲン在住。デンマークの「ヒュッゲ」と食文化に興味を抱いて30年近く、デンマークでの暮らしを実践。デンマークの高等教育機関で健康と栄養を専攻後、地元で丁寧に育てられた旬の野菜を主役にした身体に優しい料理を提唱している。菜食を伝統とするシュタイナー教育機関での献立指導とレシピ開発にも力を注ぐ。デンマークの文化を日本に紹介するつなぎ役として活躍する側面を持ち合わせる。今年4月に誠文堂新光社から出版される「北欧料理大全」で翻訳と編集を担当。

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