デンマークの暮らしと「ヒュッゲ」(9)

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花盛りの5月は、みつばちも大忙し。デンマークでは蜂蜜を収穫するのは年二回のことが多く、春の花蜜が集まっている6月収穫分を「春の蜂蜜」、夏の花蜜が集まっている9月収穫分を「夏の蜂蜜」と呼んでいます。加熱されていない蜂蜜には殺菌効力があるとも言われ、蜂蜜は古代から薬用に食用に大切に扱われてきました。デンマークでは1000年以上前のバイキング時代から蜂蜜酒を醸造する伝統もあり、今でも古式製造の蜂蜜酒が入手できます。

また、デンマークの家庭に必ず常備されているライ麦パンに蜂蜜を塗った「はちみつごはん」は、小腹が空いたときの虫養いとして、子どもだけでなく大人にも愛されています。ライ麦パンの酸味やごろごろどっしりした食感とフルーティーな蜂蜜が絶妙なハーモニーを醸し出す手軽でおいしい素朴なおやつです。

春の到来前からゆっくりと育っていたルバーブは5月から収穫できます。ルバーブは茎の部分を加熱して食する野菜ですが、くだもののようにコンポートやスイーツに利用することが多く、我が家でも、ベリーが豊富に出回るまでの間、ルバーブのコンポートを冷蔵庫に常備しています。この時期には定番のりんごも品薄になるので、ルバーブは春を感じるありがたい食材です。朝食の麦粥やさまざまな春の手作りスイーツに重宝します。

畑では、いちごの花が可愛らしい花を咲かせています。デンマークでは、6月から3ヶ月近く、さまざまなベリーが楽しめますが、いちごはその先陣を切る存在です。7月下旬に熟れる赤すぐりもこれから二ヶ月かけて、ゆっくりと熟します。あともう少しでベリー類の季節だと思うだけでヒュッゲな気分になるという表現もよく耳にします。ベリーは北欧の美しい夏の風物詩そのものです。

よいお天気になると、緑の多い場所で日光浴を楽しむ人々で賑わいます。5月には、朝にダウンコートと編み上げ靴を身につけていても、ぽかぽかとした陽気に恵まれた午後には、わざわざ薄い夏物の洋服に着替えてサンダルで太陽の光を楽しむ人を多くみかけます。いったい、いつ、夏服を揃えたのだろう・・と、毎年、驚きを隠せません。陽気に誘われるのか、わずかな時間でも夏服を纏って太陽の恵みを満喫している印象を受けます。今年は、コロナウィルス感染防止対策のため、距離や交通手段、集まる人数など、さまざまな制約がありますが、太陽の心地よい暖かさを楽しみたい気持ちは誰もが持っていて、仕事を終えた後や休日に公園などでくつろいでいる人を多く見かけます。寝転がってお日さまの暖かさを存分に楽しむ人、ビールやワインを片手にお話を楽しむ人、サンドイッチなどを持ってピクニックをする人など、さまざまなヒュッゲのスタイルがあります。見ているだけでも幸せな気持ちになれますが、このゆっくりと穏やかであたたかい空間を自分でも楽しんでみようと触発されます。

執筆:くらもとさちこ
広島県出身。広島女子大学卒業。コペンハーゲン在住。デンマークの「ヒュッゲ」と食文化に興味を抱いて30年近く、デンマークでの暮らしを実践。デンマークの高等教育機関で健康と栄養を専攻後、地元で丁寧に育てられた旬の野菜を主役にした身体に優しい料理を提唱している。菜食を伝統とするシュタイナー教育機関での献立指導とレシピ開発にも力を注ぐ。デンマークの文化を日本に紹介するつなぎ役として活躍する側面を持ち合わせる。今年4月に誠文堂新光社から出版された「北欧料理大全」で翻訳と編集を担当。

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