デンマークの暮らしと「ヒュッゲ」(13)

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8月のデンマークは、夏を楽しむ月です。森では木々や草が生茂り、小川がせせらぎ、涼やかで穏やかな空間が広がっています。森を散策することで、森の清らかな空気や樹木の香気を浴び、やすらぎと爽快感を得る森林浴は、ヨーロッパの伝統的なヒーリング療法ですが、静かで穏やかなヒュッゲの空間とも言えるように思います。

道端や畑では、夏の花であるカレンデュラ(キンセンカ)やチコリなどが鮮やかに咲いていて、心が和みます。散歩の途中に愛らしい花を花束にしながら帰途につくのも夏らしい楽しみです。

8月中旬を過ぎるとブラックベリーが実り始めます。完熟したブラックベリーを摘むのは毎年の楽しみですが、ブラックベリーは棘の多い茂みなので、腕や足にたくさんの引っ掻き傷ができます。それでもやっぱり少しでもたくさん摘みたいと思ってしまうのは、野生のベリーならではのおいしさへの誘惑なのでしょう。フレッシュなものはヨーグルトやパンケーキのトッピングとして、また、グリーンサラダへの飾りとして楽しみますが、ジャムを仕込むことも忘れてはならない手仕事です。ブラックベリーのジャムは、クリスマス・ヒュッゲの象徴でもあるコロコロ・ワッフル「エーブルスキーバ」との相性が抜群だからです。はまなすは8月上旬に花が美しく咲き誇り、8月末から9月に実が熟します。はなますの実はビタミンCを豊富に含んでいるため、古くから薬草と同じように重宝されてきました。種を取り除く手間がかかるのですが、火を通してデザートスープやジャムにして楽しみます。

デンマークに住む人々は、概して、美しい夏の一刻一刻を慈しむように楽しむことが上手です。北の国に住む人々が持つ太陽への憧憬でしょうか、夏を楽しむことに時間を惜しまず、生活の最優先課題になっているようにさえ感じます。7月は肌寒くなることもあるのですが、8月は夏らしい天気に恵まれることが多く、そんな日には兎にも角にも家族や友人と外での時間を楽しみます。学校は8月中旬から新しい学年が始まるのですが、最初の数週間は新学年の足慣らし的な期間で、親睦行事などもあり、まだまだ夏が楽しめる雰囲気です。あっという間に過ぎていく北欧の夏を楽しむ形は太陽の光を楽しむことが基本となっており、日光浴はその王道です。

執筆:くらもとさちこ
広島県出身。広島女子大学卒業。コペンハーゲン在住。デンマークの「ヒュッゲ」と食文化に興味を抱いて30年近く、デンマークでの暮らしを実践。デンマークの高等教育機関で健康と栄養を専攻後、地元で丁寧に育てられた旬の野菜を主役にした身体に優しい料理を提唱している。菜食を伝統とするシュタイナー教育機関での献立指導とレシピ開発にも力を注ぐ。デンマークの文化を日本に紹介するつなぎ役として活躍する側面を持ち合わせる。今年4月に誠文堂新光社から出版された「北欧料理大全」で翻訳と編集を担当。

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