デンマークの暮らしと「ヒュッゲ」(23)

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5月に入ると、デンマークでも本格的な春を迎えます。今年は例年より少し遅い春ですが、「チボリ」では総計85,000本の多種多様なチューリップが見頃です。

「チボリ」を象徴する建物「NIMB(ニム)」の前庭
Foto: Jan Oster
「チボリ」園内中央に位置する芝⽣エリア
背景は「チボリ・コンサートホール」
Foto: Jan Oster
回転空中ブランコ付近の花壇
Foto: Jan Oster
Foto: Jan Oster
Foto: Jan Oster
背景には「チボリ」独特のガラス製のオーナメント
Foto: Jan Oster
Foto: Jan Oster

今回は、国の文化財 に指定されている「パルテール庭園」、その庭が面している湖に沿って隣接している遊び場「ラスムスクルンプ・ワールド」、そして、そこから続く「ぶら下がり庭園」をご紹介します。

チボリマップ
© Tivoli
⻘緑で今⽉のスポットを⽰しています。

フランス発祥の庭園様式「パルテール」に由来した名を持つ「パルテール庭園」は、1943年に「チボリ」100周年記念を祝って造られました。デンマーク・デザインを代表する照明「PHライト」の設計者ポール・ヘニングセン氏は、1940年代に「チボリ」の主任建築家としても活躍し、この庭園でも柔らかいフォルムの煉瓦造りの壁、その壁に沿って並ぶベンチ、そして噴水と照明を持ち合わせる水鉢などの意匠設計を担当しました。季節折々の花々の間に点在する水鉢と、水鉢の中で踊る水と灯りの共演は、「チボリ」独特の美しさを代表しているように思います。

「パルテール庭園」
Foto: Jan Oster
「パルテール庭園」
ポール・ヘニングセン⽒が設計したベンチと⽔鉢
Foto: Jan Oster
「パルテール庭園」
ポール・ヘニングセン⽒が設計した⽔鉢とその照明
Foto: Jan Oster

この庭園には、遊歩道との間を仕切っている壁に段差を活かした工夫が凝らしてあり、遊歩道からは「パルテール庭園」や「チボリ湖」を眺めることができるのですが、庭園側からは遊歩道は見えず、静かで穏やかな独自の空間が演出されています。散歩の途中に足を休めるお年寄りや読書にふける若者、乳母車を押す若い夫妻の姿をよく見かけます。

「パルテール庭園」
ポール・ヘニングセン⽒が設計した⽔鉢と煉⽡の壁
Foto: Jan Oster
「パルテール庭園」から「チボリ湖」を望む
Foto: Jan Oster

「ラスムスクルンプ・ワールド」は、デンマーク生まれのクマの子どもとその仲間の冒険シリーズをモチーフにした遊び場です。かつて堀として造られた「チボリ湖」から続く傾斜がそのまま利用されています。

「ラスムスクルンプ・ワールド」
Foto: Jan Oster
「ラスムスクルンプ・ワールド」
くじらヴァルデの背中に乗った冒険船メアリー
Foto: Jan Oster

「ラスムス・クルンプ」は、水玉模様の赤いズボンをはいたクマの子どもの名前で、人生の伴侶でもあったイラストレーターのウィルヘルム・ハンセン氏と作家カーラ・ハンセン氏の協働で、1951年に誕生しました。大手新聞社の夕刊に連載された漫画が評判となり、世界の200紙以上の新聞に連載され、70年に渡り、20カ国以上の国で読み継がれている冒険シリーズです。

クマのラスムス君には、アザラシのスケッグおじさん、ペンギンのピンゴ君、ペリカンのペレ君などの仲間があり、ラスムス君が仲間一緒に、砂漠や、海原、地底などへ自分たちで建てた船メアリー号で冒険に出かけるお話は、心温まるストーリー展開で圧倒的な人気があります。デンマークでは幼い時分から親しみ、親になったら我が子に読み聞かせて再び楽しむという形が定着しています。*1

「ラスムスクルンプ・ワールド」では、冒険に使う船メアリー号が、くじらヴァルデに乗っている設定になっています。乳幼児が対象の柔らかい床が使われたコーナーと幼稚園児や低学年の小学生が楽しめるアスレチック的なコーナーを持ち合わせ、楽しく身体を動かせる遊び場です。

「ラスムスクルンプ・ワールド」
くじらヴァルデ
Foto: Jan Oster
「ラスムスクルンプ・ワールド」
くじらヴァルデの背中に乗った冒険船メアリー
Foto: MONSTRUM – www.monstrum.dk
「ラスムスクルンプ・ワールド」
Foto: MONSTRUM – www.monstrum.dk
「ラスムスクルンプ・ワールド」
Foto: Jan Oster

ラスムス君は北欧独特の薄焼きパンケーキ「パネケーエ」が大好物で、お母さんのメアリー*2が焼いてくれた薄焼きパンケーキにジャムをつけて食べてご満悦というシナリオがよく登場します。ラスムス君たちの壮大な冒険と並んで子ども達が大好きな場面です。「ラスムスクルンプ・ワールド」には、くじらヴァルデの口の中にパンケーキのお店が用意され、ラスムス君が大好きなパンケーキを楽しむことができます。近くにはラスムス君の家が用意され、歌のお姉さんフローラと一緒に短い劇や歌が楽しめる趣向になっています*3

ラスムス君はパンケーキが⼤好き。
www.tivoli.dk
「ラスムスクルンプ・ワールド」
くじらヴァルデの⼝の中にあるパンケーキ・ショップ
Foto: Jan Oster
「ラスムスクルンプ・ワールド」
⼤好物の北欧⾵パンケーキ
Foto: Jan Oster
「ラスムスクルンプ・ワールド」
ラスムス君とフローラさんの⼦ども向けショー
©Tivoli

「ラスムスクルンプ・ワールド」の先は「ぶら下がり庭園」です*4。ここでは、3つずつ吊るされたチーク材の植木鉢に季節の花が植えられ、それぞれの鉢の上に飾られている照明には、夕方なると灯りが灯され、独特の雰囲気が楽しめます。

「ぶら下がり庭園」
Foto: Jan Oster
「ぶら下がり庭園」を飾る照明
Foto: Jan Oster

「チボリ湖」が堀としての役割を持っていた時分に由来する傾斜はこの庭園にも活かされ、歴史を感じる立派な並木とともに昔の名残を留めています。ここのベンチでは「チボリ湖」の眺めと溢れんばかりの美しい花、大きな木に囲まれたひとときが楽しめます。心地よい木陰のある静かなゾーンなので、お母さんが授乳する姿やすやすや眠る赤ちゃんを抱いている姿をよく見かけます。

「ぶら下がり庭園」の遊歩道
Foto: Jan Oster
「ぶら下がり庭園」からの眺め
Foto: Jan Oster

今回ご紹介する曲は「コペンハーゲンに魅せられて」*5と「愉快な行進曲」*6の2曲です。

「コペンハーゲンに魅せられて」は、1960年のデンマーク映画に使われた音楽です。この映画で最も有名なシーンが「チボリ」にある風船型の観覧車でのデュエットであるため、「チボリ」やコペンハーゲン観光を象徴する曲としても使われています。「チボリ」お抱えの少年少女音楽隊「チボリガード」では、コペンハーゲンやデンマークを代表する行事で演奏します。「チボリ」が醸し出す独特のお伽の国の雰囲気やロマンチックな雰囲気がお伝えできれば嬉しく思います。

もう一つの曲「愉快な行進曲」は、1986年にチボリガードのために書かれた「Festivoli(フェスチボリ)」*7という二楽章からなる曲の第二楽章です。陽気で明るい楽しさが伝わることを願っています。

*1 2015年以降、日本でも絵本が発売されています。
*2 冒険に使う船メアリー号は、ラスムス君のお母さんの名前にちなんで名付けられています。
*3 ラスムス君はパントマイムに徹しているので、舞台での進行と歌や踊りの説明などはフローラの役割になっています。
*4 「ぶら下がり庭園」 は1955年に竣工されました。
*5 「コペンハーゲンに魅せられて」は、ベント・ファブリシアス・ベア氏の作品です。
*6 「愉快な行進曲」は、ジャズやビックバンドのリーダーとして活躍していたイブ・グリンデマン氏の作品です。
*7 お祭りという意味のFestとチボリTivoliを組み合わせた造語です。

執筆:くらもとさちこ
広島県出身。広島女子大学卒業。デンマーク人の夫、ティーンエイジャーの息子と三人で、コペンハーゲンで暮らす。30年に及ぶデンマークでの暮らしを実践する傍ら、幅広い文献にも目を通し、北欧の食文化と「ヒュッゲ」への造詣を深める。デンマークの高等教育機関でも健康と栄養の学位を取得。20年近く食分野を中心にデンマークと日本の文化を紹介する企画や執筆に携わっている。2020年4月には誠文堂新光社から出版された「北欧料理大全」で翻訳と編集を担当。
<お知らせ> 
くらもとさちこのホームページ www.kuramoto.dkで、デンマークでの暮らしを伝えるブログを始めました。
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