デンマークの暮らしと「ヒュッゲ」(25)

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7月、デンマークは明るさに満ち溢れた爽やかな夏を迎えます。気温も20度を超える日が増え、太陽の恵みを存分に感じることができる輝かしい季節です。夜が白み始めるのが4時前、夜は10時過ぎまで黄昏時が楽しめます。

デンマークの学年末は6月下旬、7月は家族揃って夏休みを楽しむ月です。デンマークの家庭はフルタイムでの共働きが大半ですが、一般就労者も夏に三週間以上の休暇がとれるお国柄なので、親もリモートワークを組み合わせながら、一週間くらいが重なるような形で交互に3週間に渡る休暇をとることが多いようです。デンマークが誇る文化施設「チボリ」は、夏の間、国内外から多くの家族連れを迎えます。

今月は、「日本の塔」と「日本庭園」、そして、東洋の雰囲気が濃いアトラクションエリアをご紹介します。

先月ご紹介した「チボリ湖」にかかる橋は、湖を二つの機能に分けています。大きなエリアは湖畔での散歩が楽しめ、小さなエリアでは「竜の舟」と呼ばれるボートで湖上でのひとときが楽しめます。湖畔には、日本の建築様式に感化を受けて設計された「日本の塔」が立ち、「チボリ」独特の異国情緒を体現しています。

「日本の塔」は、1900年にイルミネーション塔として建てられました。湖上にもイルミネーションが映るように設計されており、高さ25メートルの4階建ての塔には、2800個の電球が、さまざまな色のガラスでできた「チボリ」特製の小さなドームの中に収まり、塔のシルエットを浮き彫りにしています。

120年間、チボリの夜景を飾り、人々の目を楽しませきたイルミネーションは、「ぶら下がり庭園」に続く鉄柵越しに園外からも楽しむことができます。夏の夜遅く、イルミネーションで飾られた塔と湖に映った美しい眺めを目にしながら、人々がアトラクションで楽しんでいる声を耳に側の歩道を通る数分間も、心がふっと和むヒュッゲのひとときです。

今年、「日本の塔」では、6月中旬から9月初旬までコペンハーゲンとフェロー諸島にあるミシュラン星レストランが交代で期間限定の営業を行うという催しを設け、食通の方々の話題になっています。

「チボリ湖」の橋のたもとには、「日本の塔」と道を挟み、湖に沿うようにして造られた「日本庭園」があります。この庭園は、「日本の塔」の大掛かりな改修が行われた2010年に日本の庭師との協働で造られました。庭園を流れる水の音やモミジなどの木々に囲まれ、独特の静寂さが味わえます。

「日本の塔」の隣には鳥居があり、中国様式エリアの入り口となっています。万里の長城を模した壁や竹林、中国風の建物などで、はるか遠い異国の雰囲気を演出しています。

さまざまなアトラクションの中で最も目を引くのは、ジェットコースター「デーモン」。現代的なジェットコースターが120年前に建てられた和風の塔が側で稼働すると、大きな竜が動いているように見える気がします。

遊歩道を進むと、アラビア様式エリアに入ります。アラビア風の意匠で統一され、椰子の木が植えられ、砂漠のオアシスをイメージした造園が特徴で、アラビア風の異国情緒が楽しめます。アラビア様式エリア・中国様式エリアには、園内で最もワイルドなアトラクションが用意され、遊園地としての醍醐味が味わえます。

今回は、「チボリ」の東洋的なエリアをご紹介しましたので、音楽もそれにちなんで、日本人作曲家・吉田文氏の「175周年記念祝賀ワルツ」、そして、らくだで隊を組んで砂漠を移動する商人の一団をイメージした「キャラバン」をご紹介します。

「キャラバン」は、「チボリガード」で鼓笛隊の指導にあたっている女性フルート奏者ネル・クロ・ラーセン氏による作曲で、「チボリガード」最年少の子どもたち20名とその子どもたちを率いる鼓手長で構成される鼓笛隊が演奏しています。

「175周年記念祝賀ワルツ」は「チボリガード」1057番目の曲で、結成175周年を迎えた2019年、神戸出身でデンマークを拠点にヨーロッパで広く活躍する若手女性作曲家・吉田文氏により「チボリガード」のために作曲されました。11〜16歳の子どもたち52名からなる吹奏楽隊 が演奏しています。

三拍子のリズムからなる軽やかなワルツは、「北欧のシュトラウス」と異名をとった世界的な作曲家であり「チボリ」初代音楽監督でもあったH. C. ロンビュが得意とした楽曲です。「チボリ」創立当初からロンビュが書き下ろしたワルツの数々は、園内のオーケストラで頻繁に演奏され、踊られ、楽しまれてきました。この作品について、「チボリガード」音楽監督クラウス・チュンスホフ氏は「デンマークが誇り『チボリ』を象徴する作曲家ロンビュが築いたワルツの伝統を素晴らしい感性で現代に繋げた作品」だと語っています。現在、吉田文氏は「チボリガード」初の女性委嘱作曲家として活躍、アンデルセンの童話「ナイチンゲール」を主題にした曲など、今までの「チボリガード」の持ち曲とは異なる雰囲気を持つ難易度の高い曲で「チボリガード」の音楽性に新しい息吹を与えています。

写真: Jan Oster (作曲家 吉田文氏近影を除く)チボリマップ © Tivoli

<ご案内> インスタグラム@tivoli.og.tivoligardenで「チボリ」と「チボリガード」の折々の様子をご紹介しています。ぜひご高覧ください。

執筆:くらもとさちこ
広島県出身。コペンハーゲン在住。
30年近くデンマークでの暮らしを実践しながら、幅広い文献に目を通し、北欧の食文化と「ヒュッゲ」への造詣を深める。デンマークの高等教育機関で健康と栄養の学位を取得後、法人・教育機関で食育や献立に関するアドバイザーを務める。www.kuramoto.dkでは、毎月、デンマークの暮らしや食べごとを紹介している。

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