デンマークの暮らしと「ヒュッゲ」(28)

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デンマークの10月は、本格的な秋を迎えます。日本の秋は空が澄みわたって高く晴れることが多い気持ちのよい季節ですが、デンマークの秋は、どんよりとした雲に覆われる日が多く、小雨が続きしっとりとした季節。冬の序章のような位置付けです。厚手のコートを着込み大判のストールやマフラーを首元にしっかり巻くのが10月のお約束。夏には4時前には明るくなっていた朝も夜明けが7時過ぎになり、11時近くまで明るかった夜は6時過ぎには暗くなります。

デンマークを代表する文化施設「チボリ」は9月末に夏季開園が終わり、10月中旬には「ハロウィンin チボリ」を迎えます。「ハロウィン」はアメリカ発祥の行事ですが、ここ15年ほどでしょうか、デンマークでもハロウィン商戦が顕著になっています。「チボリ」のハロウィン開園も15年ほど続いているイベントです。

ハロウィン開園には、自社契約している農園から2万2千個を超えるかぼちゃが運ばれ、園内の至るところにかぼちゃが飾られます。アラビア様式の建物「ニム城」の前庭に展示されるのは、品評会で全国一を競った巨大かぼちゃ。夕方には暗くなる天候を利用して照明が楽しめる工夫がされています。日照時間がどんどん短くなり、気分が滅入りがちな天候を逆手にとった「ヒュッゲ」発祥のお国らしい楽しみ方ですね。

今回は、「チボリ」お抱えの少年少女音楽隊「チボリガード」が定例パレードを行うメインプロムナードの一部になっている「チボリ・コンサートホール」から野外コンサート場に向けた道沿いのスポットをご紹介します。わずか数百メートルですが、美しい建物が並ぶ通りです。

先の記事でご案内した「チボリ・コンサートホール」と「日本の塔」との間には、ヒュッゲを具現化したようなクラッシックカー乗り場があります。自動でレールの上を走るクラッシックカーですが、小さな子どもが真剣な面差しで運転しています。「チボリ」のアトラクション・デビューがここだったという思い出を持つ人が多く、我が子にも同じ思い出を作ってやりたいという声をよく聞きます。真剣な面差しで車のハンドルを操縦する幼い子どもを親が何ショットも撮影する光景は、とても微笑ましいものです。

クラッシックカーの近くには「路面電車8番線」乗り場があります。タイヤで動く「路面電車8番線」に乗ると「チボリ」のメインプロムナードを一周できるので、観光客にもってこい。地元の人も「路面電車8番線」が大好きで、ヒュッゲな乗りものだという形容がよく使われます。ホテル・レストラングループNIMB(ニム)のパティスリー部門Cakenhagen(ケーケンハーゲン:ケーキとコペンハーゲンを合わせた造語)では、今年の夏、「路面電車8番線」という名前の生菓子がデビューしました。クリームとスポンジ生地を重ねた層をマジパン生地が包んでいるデンマークらしいケーキです。

「路面電車8番線」の向かいには、先月の夏季開園の最終日に「チボリガード」吹奏楽隊が乗り込んで演奏したメリーゴーランドがあります。お伽の国から抜けでたようなという表現がぴったりのアトラクションです。

メリーゴーランドの先は、有機野菜を主軸にしたミシュラン星レストラン「Gemyse(ゲミューセ)」です。庭が菜園になっており、季節に応じた野菜やハーブが元気に育っています。庭では焚き火が用意され、マシュマロを炙ったり、パン種を巻きつけた棒をかざして直火でパンを焼いたりなど、庭での空間を楽しむ趣向も用意されています。

「ゲミューセ」の斜め向かいには、アラビア風の建築様式を模した可愛らしい建物があり、屋外ティーサロンとして使われています。コンサートホール、野外コンサート場、「ニム城」、丁寧に手入れされた噴水つきの庭園などが視野に入る抜群のロケーションです。外の空気に触れながら、美しい眺めや音楽を楽しみながらお茶をゆっくりと味わうことができるヒュッゲ・スポットです。

ティーサロンの向かいには、ガラス張り八角形の個性的な建物「ガラスホール」が建っています。1946年に竣工したガラス張りの美しい建物は、デンマーク・デザインを代表する照明「PHライト」の設計者ポール・ヘニングセンが設計したことでも有名です。世界一大きな「PHライト」が飾られているホールは967席、芝居やミュージカル、コンサートなどの公演が年間通じて行われています。

今回ご案内する音楽は、カナダ生まれ、アメリカで活躍した作曲家・指揮者ロバート・ファーノンの作品「ファーノン・ファンタジー」です。ロバート・ファーノンは40曲以上の映画音楽の作曲、そして、フランク・シナトラのアルバム収録時の指揮などで知られていますが、「チボリガード」の子どもたちの音楽性と音楽的技術に感嘆し、80年代に繰り返し協働プロジェクトを組みました。この曲は「チボリガード」に捧げて作曲されたもので、ロバート・ファーノン自らの指揮で初演が行われました。どうぞお楽しみください。

<ご案内> インスタグラム@tivoli.og.tivoligardenで「チボリ」と「チボリガード」の折々の様子をご紹介しています。また、www.kuramoto.dk および @sachikokuramoto.dkでは、デンマークの暮らしや食べごとについて投稿しています。フォローで応援していただけると励みになります。また、メールアドレスのご登録で最新投稿をお知らせしています。どうぞ合わせてご検討ください。

Foto: Jan Oster  チボリマップ © Tivoli

執筆:くらもとさちこ

広島県出身。コペンハーゲン在住。 30年近くのデンマークでの暮らしの中で、幅広い文献に目を通し、北欧の食文化と「ヒュッゲ」への造詣を深める。デンマークの高等教育機関で健康と栄養の学位を取得後、料理講座の主宰、法人・教育機関で食育や献立に関するアドバイザーを務める。近年は、デンマークの文化や暮らしを日本に紹介する活動を行っている。

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